第2章■
~競馬市場は効率的ではない!~
効率性
「効率性」という言葉は一般的には聞きなれないフレーズかもしれません。
これは金融工学で使われる専門用語で、元々は株式市場についての研究が 発展していく中で発明された「効率的市場仮説」という考え方に由来する言葉です。
効率的市場仮説(Efficient Market Hypothesis, EMH)によれば、 株式市場は証券分析のプロフェッショナルが収益機会を虎視眈々と狙っており、ほんの少しでもお買い得な株式があれば参加者が瞬く間に買いあさり、 結果その株は値上がりし収益機会は消滅してしまう、という考え方です。
その詳細な説明は別の機会に譲るとして、この考え方を馬券売り場に適用してみましょう。
馬券を買う人は常に馬の勝率とオッズを見比べています。
そして、勝率に比べてオッズがほんの少しでも有利な馬券があれば皆が売り場に殺到し、その馬券を買いあさり、その結果オッズは馬券の勝率に 見合う値になるまで下がってしまう、という状況が達成されていれば「効率的馬券売り場」になっていると言って良いでしょう。
完全に効率的な馬券売り場では「全ての馬券には勝率に見合うだけのオッズがついているはずであり、オッズ×勝率 は常に一定値になるはずです。
つまりJRAの控除額を引いた、0.8(単勝/複勝馬券)もしくは 0.75(それ以外) となるはずです。
stat arb
stat arb(Statistical Arbitrage コンピューターを用いた高度な統計的分析を元に取引銘柄を選定し、自動売買を行うこと) の手法を用いて投資対象を攻略しようとする場合、「効率性」が最も重要なポイントの一つなのです。
その意味で、上表の単勝の配当グラフから見てとれるのは、馬券参加者は決して「効率的」ではなく、また、その一点においてのみ 馬券購入方法の儲けに繋がる攻略の糸口が隠されていると言えます。
つまり的中率という観点では、オッズから見る馬券購入者全体の総意は見事に未来を予見できてる方向に向いていると言えるのですが、 配当と兼ね合わせて見ると、的中性向により特化しており、馬券を当てようとするほど儲からなくなっているのです。
端的にいえば、一番勝つ確率の高い馬よりも、少し離れた位置のオッズの馬からの馬券を買った方が儲けが大きくなると言うことです。
つまり、単勝でいうならば、表にあるように7倍から20倍台(もしくは50倍台)間のオッズの馬こそが買いに値するゾーンの馬だということなのです。
単勝の平均配当は毎年約10倍前後ですから平均値を中心とした部分こそが結果的に控除のハードルが最も低くなっている箇所だといえます。
そのゾーンよりも人気があっても、もしくはなかっても(大穴より)であっても回収率は逓減していきます。
即ち本命寄りも、大穴狙いも効率的な狙い目ではないということです。
勿論、いくらハードルが低いからといって闇雲にそのゾーンの馬全てを買っては、表で見るように回収率が100%を超えることはありません。
このゾーンに位置する馬は単勝2番人気~10番人気辺りの馬になりますが、そのゾーンよりも上に位置する馬が凡走する確率が高く、そのゾーンに位置する馬で勝つ能力があるとみなせる馬が少数に絞れるレースのみを馬券購入の対象にすることで、その低いハードルを飛び越すことを目的として考え出したのが、本マニュアルの馬券術になります。
的中率の向上には限界があり、またその方向性の追及はいくら努力してみても、おのずとその不確定要素に飲み込まれ、オッズの控除の壁を乗り越えるレベルにまでの的中率レベルに達することはできません。
しかし、100%以上の回収率にある馬は、特定のレースには存在します。(レースによっては、1頭もいないケースも多々あります。それは、全ての馬が控除によって回収率が100%を超えないケースを意味します)
100%以上の回収率のある馬を的確に見抜き、その馬からの馬券を購入出来れば、自ずと勝利は近づくと考えられるのです。