アナライジングホース 第4章 間違った馬券術

投稿日:2019年12月23日 更新日:

■第4章■
~間違った馬券術~

未来予測

先に挙げたように、買い方の工夫だけで儲かるという内容の馬券術は全て紛いものです。

予め勝馬が決まっているとするサイン派などは無視するに限ります。

未来を予測することができないから人間はあれこれ手を尽くすしかないわけで、馬鹿丸出しの占い師のうそぶく未来が当たったためしなどないのは普通の人間なら良く知っている筈です。

但し、競馬の楽しみ方の一つとしては否定はしません。遊びの一環なら何の文句も言いません。

しかし、それをあたかも正論として理屈付け、大手を振って情報として売りつけようという魂胆に対して、この場だから批難するだけです。

もし貴方がこの様な馬券術に必勝の幻想を抱いているならそれは間違っていると断言します。

貴方やあなたの周りの人がこの様な考え方に嵌まっていなら、どうぞ助けてあげてください。
悪い宗教のマインドコントロールを解いてあげるのと同じにじっくりと説明し、その間違いを諭して悪い考え方から解放してあげて下さい。

但し、それらの考え方が全てなくなってしまえばいいかと言えばそうではないです。

なぜなら、間違った方法論による歪な馬券投資があるからこそ、その狙い目とは別の馬に旨みが発生するからです。

先に述べた様に馬券売り場が完全に効率的ならば、ここで儲けることは胴元以外ほぼ不可能になります。

つまり、間違った考え方に基づく非常に非効率な馬券投資が多ければ多いほどその市場で儲けるチャンスが拡大することになります。

ですから、そういうチャンスを数多く生み出してくれているという点が理解できれば、間違った馬券術を行使しない人間にとってはその考え方を使って投資された売上は有益なものになります。

投資馬券の買い目の大半はおそらく人気馬で構成される馬券でしょう。

つまり、中穴の馬券を買い目の中心にすることは、過剰投資の対象になり易いゾーンを避け、更にその過剰投資分を自分の賭けた馬の勝利時により大きい配当を得ることに繋がるのです。

つまりは間違った馬券術が存在するからこそ馬券で儲ける手段が残されているとも言えます。

ただ上記の例とは別に偽データ分析派にも気を付ける必要があります。偽データ派とは、データの都合のいい期間だけの検証で、あたかも儲かるかのように騙すデータ馬券術のことを指します。

うさぎは亀に勝てないという理論

ここでひとつ、古代の詭弁家が使った「うさぎは亀に勝てない」という理論を聞いたことがあるでしょうか。

問題はこうです。

因幡の白兎とカメのアリストテレスが100メートル競走をすることになりました。
ウサギは秒速10メートルで走り、カメは秒速1メートルです。
そこで審判の長崎河童はウサギにハンディをつけることを考え、カメのスタート地点を10メートル先に置きました。

これを見ていたひょうろく狸がこんなことを言いました。
「ウサギは絶対に勝てない。追いつくこともできない。

なぜなら、ウサギが今カメのいる地点に達したとき、その後、ウサギがカメのいる地点に追いついたときには、カメはさらに10センチメートル先にいる。

さらに、ウサギがカメのいる場所に着いたときには、カメはまた少し先を走っている。

こうして次々にウサギがカメのいた場所に追いつくたびに、いつもカメはほんの少し前を走っているはずだから、ウサギは永遠にカメには追いつけない」という内容です。

答えは

①初めウサギがカメのいた場所(スタート地点)に到達するのは1秒後です。確かに、カメはその間に1メートル進んでいます。

②次にウサギがカメのいた地点に来るのは10分の1秒後、カメはすでに10センチメートル前にいます。

③その次ウサギがカメのいた地点に来るのは100分の1秒後、カメはやはり1センチメートル前にいます。

④ここで考えてください。「次々にウサギがカメのいた地点に到着するのにかかった時間」は何秒になるでしょう。

1(秒)+10分の1+100分の1+1000分の1+・・・・となります。
書き換えると1+0.1+0.01+0.001+0.0001+・・・

これは10^(-1)<10のマイナス1乗>を公比とする等比数列の合計です。

数学的に書くと

本当はをΣの下、<∞>を上に書きます。

これを計算すると、Sは限りなく9分の10に近づいていきます。

9分の10秒は、ちょうどウサギがカメに追いつく時間です。

ひょうろく狸が「永遠に」と言っているのは嘘で、9分の10秒以前のことを語っているに過ぎません。

やはり、ウサギはカメよりも早いのです。

この問題で何を伝えたいのかと言えば、都合の良い期間だけで構築された儲かるデータは当てにならないということです。

ある期間に於ける出現確率と回収率が未来のいかなる期間に於いても常に一定の割合で出現し、尚且つ、決まった回収率をもたらすデータではないのです。
特に出現率が低すぎるものは当然のことながら未来のその馬券術を実施する人間が期待する期間に於いて期待する出現率と回収率を決してもたらしはしないでしょう。

うさぎが亀に勝てないのではなく、亀が勝てる範囲の中だけに限定された理論を振りかざすものには十分注意が必要だということです。

競馬の実践データをみれば大抵の破綻している馬券理論は簡単に見破ることはできます。

例えば勝率10%、回収率120%の馬券術があるとします。

おそらくその平均配当金は1200円前後になるでしょう。

その場合実践データ内に200円や300円のデータが複数あるだけで、その理論は既に破綻していると言えるでしょう。

中心値より大きく乖離したデータが現れるということは即ちあまりに大きな分布の広がりであり、引いてはその法則を用いた馬券術の照準が的外れの方向に向いてしまっていることになるのです。

ですからこんな馬券術に傾倒してはいけません。

正しさは常に妥当な範囲内に収まります。

だからこそある程度恒久的な安定を提供できるものなのです。

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